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パイロットのがん死亡率

「宇宙線に長時間被ばくする客室乗務員・パイロットの放射線関連がん死亡率は原子力技術者より高い」との疫学調査結果がヤフーニュースにでていました1,2)

しかし、過去の大規模なパイロット疫学研究では、一般人口と比較して全死亡率、全がん死亡率ともむしろ低いという結果が繰り返し報告されています3-6)

「放射線関連がん」という表現には注意が必要です。これは「放射線が原因で発生したがん」という意味ではありません。「放射線との因果関係が疑われているがん」という意味にすぎません。

この研究は死亡診断書に記載された職業と死因を比較したもので、個人の放射線被ばく量を測定しておらず、被ばく線量とがん死亡との線量―反応関係も調べていません。

したがって、この研究だけから「航空機乗務員は宇宙放射線によってがん死亡が増えた」と結論することはできないのです。

過去の研究についても、健康な人がパイロットに選ばれる「健康労働者効果」などを考慮する必要があります。パイロットは一般人よりも厳しい健康管理をしており、それが心疾患やがんを含む死亡率の低さに影響している可能性があります7,8)

疫学研究では「相関」と「因果関係」を区別することが重要です。疫学研究は雑多な生データから因果関係を抽出する「方法の研究」であり、その結果は解析の方法によって変わりうることを頭に入れておく必要があります。

研究結果だけを一人歩きさせて、そのまま放射線被ばくによる発がんと受け取らせるような記事の書き方は、読者に誤解を与えると思います。

  1. https://news.yahoo.co.jp/articles/8307eb3c121d644f0aa8b2c18288eec0299f1c4a
  2. https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2852504?utm_source=chatgpt.com
  3. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12918075/
  4. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10373044/
  5. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22678613/
  6. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4511278/?utm_source=chatgpt.com
  7. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12819997/
  8. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4511278/?utm_source=chatgpt.com